肩関節を痛める前に
野球選手の致命的な怪我の代表といえば、「肩の怪我」です。
よく、野球選手の間では、「前が痛いとよくない」、「後ろが痛いとよくない」、などと言われることもあるようですが、厳密に言うと「どれもよくない」ことです。
肩の怪我は野球選手生命に致命的なダメージを与えることもあります。
痛み、損傷の度合いにもよりますが、
「あるポジションに肩の関節の状態がなった時に痛みが発生する」、または「逆に痛みが発生しない」という診断で
どれくらい治癒に時間を要するのかは比較的安易にわかります。
しかしこれらのことは、MRIを撮影しても、CTを撮影してもその他の検査を行ったところで診断結果は変わることがありません。
とくに何も変わらず診断名がつけられるだけです。
ここの微妙な変化に関しては、実際に肩を痛めたことがある人にしか差が分かりません。
そしてそんな経験のある医者というのは稀です。
そんな時、私の独自に考案した野球選手向けの肩関節のテストというのがあります。
この時に陽性か陰性かで、「1年以上かかるものなのか」、「1ヶ月ほどで投球できるようになるのか」を知ることができます。
陽性が出た場合には、遠慮なく1年以上はかかると言います。
ただ、その選手が1年先になると野球人生が終わってしまうというような状況であれば、それは投げながら治していきます。
しかし、その結果は、上位の野球の世界に行けたとしても、後遺症が残ることは必至でしょう。
とはいえ、それでも勝負をしなければならないという感情は理解できます。
そのため、可能性をすべて伝えた上で、選手の自己判断が必要になってきます。
基本的には、若いうちはしっかりと元どおりの関節を作り、再度出発するような形を作るべきだとは思います。
肩の怪我は本当に長引く時はとても長引きます。
どんな名トレーナーでも、権威と言われる医師でも完全に治療することは難しいと言えます。
と、ここに記したのは、私自身が肩の故障によって、社会人野球まで続けた野球人生に終止符を打ち、その後の治療院経営時代を通しての考え方です。
しかし、医者からの意見というのも当然あります。
それぐらい野球選手の肩の故障には様々な考え方や意見が存在し、痛めてしまっては治療に入ることですら難しモノです。
そして治療自体も中々効果を得られるものではありません。
たまたま、良いトレーナーや良い治療家に巡り合えばいいかもしれませんが、皆が皆出会えるわけではありません。
それぐらい肩の故障というのは野球人生において本当につらいものです。
故障してしまう前に、可能な限りのことをやっておいて損はありません。それでも野球選手の肩関節の酷使は尋常ではないのですから。
本人はどこまでも無理をしてしまうものなので、大切な家族や、チームメイトだからこそ、本人にこの内容を伝えてもらいたいと思います。
本当に痛めてからでは遅いのです。