野球肩に対する誤解を今すぐ解こう。
「野球肩」と言えば、野球選手を悩ませる最大の故障として知られています。
なかでも「投手」にとっては致命的で、選手生命が長くなればなるほど、現在ではリスクが高まる傾向にあります。
そして、「野球肩」を一度、患ってしまうと大半の選手が完治することはなく、引退の原因になってしまうことがほとんどです。
それだけ重大な故障であるわけですが、問題はそれだけではありません。
・「野球肩」発生から痛みが取れるまでの復帰プロセス
・「野球肩」の痛みが取れてからの投球するまで復帰プロセス
に対して、医療関係者・監督・スタッフ・本人・両親が大きく誤解していることです。
これは「野球肩革命所」を創設した理由であるため、批判を覚悟してでも伝えずにはいられません。
野球肩がなぜ起きるのか
「投げる」という「動作」は「肩関節」に対して様々な「負担」をかけています。
その「負担」に対して「回復」の割合が不均衡になってしまった時、「傷害」が発生します。
つまり、俗にいう「野球肩」です。
「負担」と「回復」のバランスがとても大切ですが、本人を始め、周りの人間も全快していると勘違いしています。
野球は一般人では考えられない程の「肩関節」への「負担」をかけているのに、一般の人に毛の生えた程度のケアでは全快することはありえません。
つまり、程度の差こをあれ、誰しもが「負担」を蓄積させ続けることになります。
ここでは、「選手本人」の自身の「肩」状態を把握する能力が大切になります。
あまりにも過保護にしてしまうと「肩周り」の「筋肉」を育ってることはできません。
しかし、酷使しすぎると「傷害」を招く要因となってしまうこを理解しておく必要があります。
野球肩の治療現場の現実
私の所にこ以下のような相談がよくあります。
医師から2ヶ月間の「ノースロー」を言い渡され、2ヶ月間の「ノースロー」を終えた後、投げてみると痛さは全くなくなっていなかった
それでも、監督・スタッフ・両親などの周囲の人間は
医師」が投球許可を出したのだから、すぐにでも投球しても大丈夫だろうという判断を下す
傾向が強くなります。
たまたま、こんなケースになったわけではなく、これは「野球肩」に関する「傷害」においては「あるある話」です。
「野球肩」の故障経験がある人であれば、ご理解頂けると思います。
こんな現状が続いていること自体は理解できないわけではありません。
「医師」は、体に関しての専門的な知識が豊富なため、「故障」した選手の状態を聞くだけで、「症状」と「経過」の判断を大方つけることができます。
しかし、沢山の患者を診なくてならないため、ある一人の野球選手だけに時間を割けない現状があります。
「故障」した野球選手は、「自分の肩がどういう状態なのか」、「どうすれば復帰できるのか」を知りたいという思いで受診しています。
そのため「医師」が言ったことを守ろうとします。
それにも関わらず、「痛みは変わらない」という結果であれば、その2か月間という時間は何のために費やしたのでしょうか。
野球肩が治らないのは医療従事者だけが問題ではない
周囲の人間が「医師」の判断を絶対視するのは、専門家だと思って話を聞くためです。
しかし、一度考えてみてください。
野球選手の肩は非常に繊細に扱わなければならない部位です。
そんな「肩」でなくても、他の部分でさえ2ヶ月間も使わなかったとしたら、一般人と同等の状態になってしまいます。
人間の身体の適応力の高さが裏目にでてしまいます。
良い習慣を与えれば、身体はすぐにそれに適応し、反対もまた然りです。
休めばすぐに通常の生活に適した身体に変わり、野球人としての身体からはかけ離れてしまいます。
そんな状況で、活動停止後すぐに復帰し、以前と同様にプレーを続けさせることは、自殺行為と言っても過言ではありません。
仮に、2ヶ月間休んだとしたら「体」が「故障前」の状態に戻るまで、約3倍の期間を要すると言われています。
そして「故障」の原因となった身体の動作のクセはそのままです。
周囲の人間は、この事実を知った上で、指導やアドバイスをしなければなりません。
野球選手や、他スポーツ選手の体の使い方は、一般人の使い方とは雲泥の差です。
スポーツに特異的な身体の構造に近づいていきます。
特に野球選手では、「肩関節」を通常では考えられないぐらい酷使します。
そんな「肩関節」に対して、「長期間のノースロー」を行うだけで、一般的な方々と同じ肩になってしまいます。
これは先ほども述べたように大きな問題を生みます。
「投げ方」自体は覚えているため、復帰後であっても投球練習をすることは可能でしょう。
しかしそれに耐えれるだけの「肩関節」ではありませんし、同様に負荷がかかる投げ方をしていてはすぐに「痛み」がもどってくるでしょう。
この状態で、「野球肩」が完治したとは言えないはずです。
野球肩を治していくために考えなければいけないこと
野球のシーズンは3月~11月ぐらいの約9ヶ月間です。
とくに(故障の)経験者ではない医療従事者はこの期間における選手の心情が分かりません。
・どの時期に痛みが発生しているのか・怪我の度合いは時期的に考えれどうなのか・学生なのか・プロなのか・学生なら何年生なのか・エースなのか控えなのか・プロであれば戦力外がかかっているのか・若手でまだ猶予はあるのか
考え始めればキリがないほど、その選手の状況は違います。
それでも「野球肩」を本気で治したいのであれば、すべてを加味してアドバイスできる人がいなければ治りません。
そして、治す本人も自分の置かれている状況を適切に考え、知識を本気で得なければ治りません。
周りの人間も簡単に情報を鵜呑みにしてはいけません。
選手が、故障前より良い状態になって帰って来てはじめての「完治」です。
例えば、
・シーズンに入った時に肩の痛みが発生しているのであれば、2ヶ月間ノースローで、復帰は6ヶ月後の8月をめどにプログラムを組んで進めていこうという・シーズン真っ最中に痛めたのなら、学年や立場によって、投げながら治していく選択・シーズンオフまで我慢させた後に徹底的な治療を行う
といった選手個人に対してのアドバイスや方法を考えていかなくてはいけないのではないでしょうか。
野球肩を治らないのは選手の責任であることは変わらない
さらに言えば、「チーム事情」や「その選手の未来」までトータル的に判断しなければいけません。
そのための判断材料を用意してあげるのが指導者や周囲の人間の役割でしょう。
選手自身もやらなければならない瞬間があるため、恐怖と闘わざるを得ない瞬間がどうしてもあります。
そんな時の、「精神的なケア」や、「正常な判断ができなくなった時のサポート」として親御さんや指導者がいるのではないでしょうか。
野球選手の「野球肩」に関する故障はとても難しい問題です。
医師でも野球をして肩を痛めてみないことにはなかなか判断できないことです。
どれだけその一人の選手に対して親身になってサポートしてあげられるかがその選手の未来のためになります。
この記事をきっかけに一人でも多くの「野球肩」の痛みで、悩み続ける選手が減り、これからの野球界を担う選手が増えることを祈っています。
最後に念のため伝えておきますが、どこまでいっても、最後に責任をとらなければいけないのは、選手であるあなた自身です。
故障をしないために、予防しておくことも必要ですし、間違った知識を与えてくる周囲の人間を無視する勇気も必要です。
「あなたの目的は何」で、「そのためのリスクは何」なのか、知らない間でも常に決断を迫られていることを忘れないでください。