野球肩を予防するには知識が必要 ~投手の肩関節について~
野球選手、とくに投手にとって「肩関節」の「傷害(しょうがい)」は、選手生命にとって致命的になる可能性を孕んでいます。
今回の記事は少し、小難しい内容にはなってしまいますが、できる限り、「肩関節」の「傷害」が発生する前に、一読しておいてください。
傷害について分からない方はひとまず「野球選手の怪我の9割は「傷害」だって知ってました?」の記事を確認してください。
「肩関節」の「傷害」がいわゆる「野球肩」と呼ばれている投手を最も悩ませる故障です。
それでは、本題の、野球選手の「肩関節」の「傷害」に関して、故障の度合を5段階に分割して説明したいと思います。
1.日常生活では痛くないが投げると痛い(キャッチボールで肩が温まると痛くなくなる)
2.日常生活で痛いときもある(キャッチボールで肩が温まると痛くなくなる)
3.日常生活で痛い(投げても痛いけど我慢は出来る)
4.日常生活で痛い(投げると痛くて我慢ができない)
5.日常でも痛くて憂鬱(全く投げてれない)
数字が大きくなるごとに、軽度のものからだんだん重症となっていきます。
私の経験上、[2]より悪くなると、全治1年と見ておいたほうが良いでしょう(とは言え投げられないというわけではありません)。
それくらい「肩関節」の「傷害」は治りにくいのが特徴です。
つまり、
[1]の段階で適切な治療を行うことができるかどうかが「野球肩」を未然に防ぐ上では重要
だということです。
「医師」や通常の「治療家」の方であれば、[3]~[4]でも全治3ヶ月くらいと判断をするかと思いますが、そんな簡単にはいきません。
リハビリなどを通じて、「可動範囲」などは正常値となり「痛み」もほとんどなくなるので投げていいと言われるでしょう。
しかし、いざ「グラウンド」で「ボール」を投げると「激痛」が走るところが「野球肩」のやっかいな所です。
医療機関での診断と、投手自身の感覚にギャップが生まれてしまいます。
何もこの事実は想像で話しているわけではありません。
実際に私が10年前に経験していることです(「野球肩革命所とは」)。
その結果どうなったのかというと・・・「野球肩」が原因で「引退」です。
私のようにならないためには、遅くとも[2]の段階で、約1週間の「ノースロー」と徹底的な「治療」によって、2週目には「治療」と平行しながら投球を開始するような流れを創ることです。
「野球肩」を早急に完治させるポイントは、投球しながら治すことが「投手」の「肩関節」には必要不可欠です。
「ノースロー」、「治療」のどちらか一方だけでは治りません。
野球選手の肩関節の構造について
「肩関節」の「傷害」を語る上で、「肩関節」の構造について理解しておく必要があります。
実際の名称を覚える必要はありませんので、これだけ多くの「骨」・「関節」・「筋肉」・「神経」が関わっているのだ、と認識する程度で読み進めてください。
「肩関節」とは一つの関節の名称ではなく、実際にはいくつもの「関節」が存在し、複合的な総称として「肩関節」と呼んでいます(「肩鎖関節」、「胸鎖関節」、「肩甲上腕関節」、「第二肩関節」、「肩甲胸郭関節」の5つの「関節」を総称して「肩関節」)。
まず「肩関節」に関わる骨として、「上腕骨」、「肩甲骨」、「鎖骨」、「肋骨」があります。
さらに「筋肉」が無数に関わっています。
「肩腱板」と言われる「インナーマッスル」、「三角筋」や「上腕」の「筋群」や「首」に関する「筋肉」などです。
そして、これらの「骨」や「筋肉」によって「関節」が機能しています。
ここに「神経」が関わることで実際の繊細な動きを可能としています。
そして「肩関節」には最大の特徴があります。
それは
肩関節がその他の関節とは異なり様々な方向に動くことができること
です。
この可動性を生み出すためには、引き換えに「不安定」な「関節」である必要があります。
そのため、
たくさん動くことで「傷害」にもなりやすい
というのが特徴です。
便利だからこそ故障しやすい肩関節
「肩関節」は様々な動きを実現するために、「不安定」な「関節」になっているとお伝えしました。
様々な動きを実現してくれるため、とても「便利」な造りになっています。
「便利」ということは、それだけ使用される頻度も高く、可動域が複雑であるほど、負担が大きくなってしまいます。
つまり、扱い方が上手ではないとすぐにヘソを曲げてしまいます。
こんな関節を使って常人とは比べ物にならないプレーを繰り返すのが野球です。
よっぽど気を使った使い方をしなければ、「故障」してしまうのが当たり前のハナシです。
さらに言えば、「使い方」だけではなく、「疲労」が蓄積されていくため「ケア」や「メンテナンス」をすることが当たり前のように必要になってきます。
そのためには、野球選手が最低限の「肩関節」の構造や役割のイメージを頭に入れておく必要があります。
イメージを持つだけでも故障などへの考え方が変わってきます。
さらに「肩関節」について学べば、野球選手にとって最重要の課題も解決することができてしまいます。
それは
自分の身体の構造を知ればパフォーマンスの向上につながる
ということです。
野球界には謎の定説がたくさんあります。
よく言われるので言えば「根性論」と一括りされてしまいますが、正しそうで全く根拠がないことという判断が一見難しいものもあります。
しかし、人間の身体の構造を知っていれば、根本的におかしいことに気づくことができるはずです。
そしてそこから独自のトレーニング方法にいきつきます。
何も医者レベルの知識を持てと言っているわけではなく、小学生レベルの理科の知識で十分事足ります(『野球肩になる前に肩関節を勉強せよ! ~必用なのは理科レベルの勉強で十分~』)。
しっかりと「肩関節」について学び、「野球肩」の予防と適切なパフォーマンスの向上を目指しましょう。
そして、野球選手の大半は何もしなければ必ず「野球肩」になってしまうので(『【野球肩への対策】9割の投手が野球肩予備軍の選手だって知ってた?』)、可能であれば[1]の段階で、最低限でも[2]の段階までに、適切な処置をして頂ける方相談してください。
痛みの判断のポイントはこちらの「【野球肩への対策】あなたの肩は「ハリ」なのか「痛み」なのか分かっていますか?」にも記しているのでご参考になってください。
相談する相手を選ぶ時はなるべく野球経験者で、実際に「野球肩」を経験したことがある「医師」及び「治療家」であることをおススメ致します。
なかなか少ないですが、私の知る限りでも数人いらっしゃるので必ず見つけておきましょう。