アイシングが野球肩対策になる根拠は乏しい
まず「アイシング」が疲労回復の根拠としている部分について検証しましょう。
「アイシング」は、
「川の流れをせき止めて、せき止めたものを解放した瞬間にゴミと一緒に水も流れる」
というイメージを筋疲労に当てはめて生まれた手段です。
つまり、疲労物質を血液がせき止められ、急激に流れる勢いにのせて流してしまおうという考え方です。
また、神経的な鈍感を誘発することで痛みの軽減を行い、炎症を起こした時には、外傷の炎症期を抑制すると言われています。
そのため、投手の投球後、慢性的な持病を持つ選手、外傷、張り、などに対して「アイシング」を行うことで、「疲労回復」などにつながると考えられています。
しかし、これらの考え方は生理現象の観点から考えていくと理屈に合わないことが簡単に分かります。
「アイシング」を行いながら患部を圧迫すると、毛細血管の収縮につながるため血流が乏しくなるということは間違いありません。
そのため、血液中の「発痛物質」や「発痛促進物質」が患部に届かなくなるため痛みを抑えることができます。
さらに、神経的な興奮も抑制するの「痛み」の抑制につながります。
しかし、ダムのようにせき止めたのもを解放することで毛細血管に一気に血液が流入するかは考え物です。
人間には元来、血流の調整機構があるため、一部の血管に血液が流入しないのであれば、他の臓器への流入を促進する仕組みが存在しています。
そのため、人間の体の構造を考えれば、血液をせき止めてもダムのようにたまることはありません。
つまり、勢いで疲労物質を流すという考え方の根拠は不明確です。
さらに、冷やすことで血流阻害を起こしていることは、「発痛物質」を抑えるだけではすみません。
同時に「栄養」やその他の「修復物質」の運搬も阻害しています。
つまりこれらをまとめると、
アイシングは「痛み」を緩和するものの疲労回復には貢献せず、むしろ遅らせている
という考え方が最先端の現場では主流です。