投手にとって必要な足腰の強さとは
では、投手にとって必要な「足腰の強さ」が意味する本当のところはなんなのでしょうか。
それは、
「足腰の使い方」のこと
です。
決して「筋肉」や「骨格」のハナシではありません。
ピッチャーにとって「足腰」は、投球時の腕を振った後に、振り抜いた腕のブレーキングをする作用として重要な役割を果たしています。
腕を振った際の腕本体のブレーキを行うのは肩の後方の筋肉群なのですが、この筋肉群はその振った腕を止められるほどの筋力はありません(『野球肩を治療する前に肩周りで投手にとって最も大切な筋肉を知れ』)。
その負荷を分散しサポートしてくれるのが「下半身」、つまりは「足腰」なんです。
この
投球時の腕のブレーキ役として上手く作用するような使い方ができる
というのが野球選手にとっての「足腰の強さ」です。
足腰が上手く働かないと、肩の後方の筋肉群が目一杯働き過ぎてしまうため、疲弊しやすくなり、動きが悪くなり、パフォーマンスを低下させ、最悪のケースとしては、「怪我」や「故障」を誘発してしまいます。
身体には「骨」や「筋肉」があり、「骨」と「筋肉」の関係性がよいと、身体の安定につながります。
「骨」と「筋肉」の関係性により身体の安定が生まれれば、「リリースポイントの安定」を生み、「ボールへの力の伝達」も適切に行われます。
つまり、ピッチャーの投球パフォーマンスの向上につながるということです。
そして多くの人にとって意外に感じるかもしれないことが、
「安定性」を保つために筋力というのはあまり関係していない
ということです。
筋肉は「身体の安定」にほとんど関係していない
「身体の安定」だけを求めるのであれば、筋力量は日常生活+α程度でクリアできてしまいます。
むしろ、必要以上の筋力が存在すると、その筋力に依存しすぎるため、逆にバランスを崩す要因になり、「安定性」が損なわれる可能性が高くなります。
大事なポイントとしては
力の伝達がうまくできるような安定した関節ポジションを作ること
です。
筋肉はあくまで力を伝える役割として機能します。
つまり、
「身体」を安定させ、動作のパフォーマンスを高めたいなら「身体の使い方」を知ることが大切
だということです。
そして、その「身体の使い方」を適切に行っていくなかで、自然と「筋力」が増えていく形が理想的です。
野球選手には野球に必要な筋肉以外はいりません(『筋肉はつけるものではなく自然につくもの』)。
肉体美を自慢したい方は大きな筋肉を創った方が良いと思いますが、野球選手として上達したいのであれば他に考えることが山ほどあります。
結論としては、
投手にとって足腰の強さが必要ないわけではなく、その足腰の強さがなんであるのかを検証する必要がある
ということです。
野球業界で一般的に言われるような「足腰の強さ」という認識は甘すぎで、野球選手にとっては無駄な要素を多分に孕んでしまっています。
野球選手にとって必要なトレーニングは、「試合でのパフォーマンスを高める」ためのトレーニングです。
ただ漫然と筋力量を増やすための走り込みなのであれば、少しでも筋力を休めてあげることを考えた方がパフォーマンスは上がるのでやめてしまいましょう。
あなたは「走り込み」によって何を実現したいのでしょうか。
そしてそれは本当に「走り込み」によって実現できるのでしょうか。
またあなたが最近パフォーマンスが上がった要因は本当に「走り込み」にあるのでしょうか。
一度考えてみてください。